不動産鑑定評価理論 対象確定条件  

いきなりで「なんだ?」と思われるかも知れませんがちょっと個人的なメモ書きです。

まず基準第5章1節に記述されている「対象確定条件」のくだり。

対象確定条件は、対象不動産(依頼内容に応じて次のような条件により定められた不動産をいう。)の所在、範囲等の物的事項および所有権、賃借権等の対象不動産の権利の態様に関する事項を確定するために必要な条件である

とあります。
そしてその下には1〜4の条件が記載されています。(独立鑑定評価や部分鑑定評価についての記述)

ここでなんかしっくりこない感じがします。基準をそのまま読むと、この4つの条件は対象不動産の「内容」を定めるための条件であり、この条件によって定められた不動産(これを対象不動産といっています)の所在、範囲等の物的事項や権利の態様に関する事項を確定するために必要な「対象確定条件」と呼ばれているものは、これとはまた別のものなのか思ってしまうのです。

つまり、不動産の所在、範囲等の物的事項および所有権、賃借権等の対象不動産の権利の態様を定める条件とは普通に考えれば

    • 物的事項なら地番、面積、家屋番号など
    • 権利の態様なら、賃借権、地上権、地役権など

の事を指すと思いますが、これが「対象確定条件」なのだろうかという疑問がわくのです。

この件に関しては、次に基準の総論第9章第2節の「記載事項」を見ると、なんとなく解決する気がします。というのは基準では

Ⅱ 鑑定評価の条件
対象確定条件又は依頼目的に応じ付加された地域要因若しくは個別的要因についての想定上の条件について・・・

というくだりがあり、さらにその次には

Ⅲ 対象不動産の所在、地番、地目、家屋番号、構造、用途、数量及び対象不動産に係る権利の種類

とあります。

これをあわせて考えれば、基準上は、ちょっとわかりにくい記述ではありますが、「対象確定条件」とは独立鑑定評価、部分鑑定評価などの条件であって、地番や地目や家屋番号というのは鑑定評価の条件ではないと読み取ることができるかと思います。

ただし、これはこれで間違いの無い見解だとは思いますが、素直に考えると(素人考えですが)

「対象確定条件は、対象不動産の所在、範囲等の物的事項および所有権、賃借権等の対象不動産の権利の態様に関する事項を確定するために必要な条件である」

と書いてあれば、独立鑑定評価などの条件はもちろん(建物及びその敷地である物件のうち、両方が対象なのか、建物だけが対象なのかなども決めなければいけませんから)ですが、地番や地目や家屋番号みたいなものも「対象確定条件」では無いのかと思ってしまいます。

そこで、まずバイブルともいえる「要説」を読んでみたのですが、この点に関してははっきりとした結論は得られませんでした。そこで個人的に不動産鑑定士さんが基準を解説しているような書籍などを読んでみたのですが、そこでは、

対象確定条件には、(1)対象不動産の内容の確定、(2)物的事項の確定、(3)権利の態様に関する事項の確定の3つがあります。

と書かれていて、これはものすごく自分の中で納得のいく記述です。私の中ではこのイメージなんです。
ただし、そうだとすると、基準の総論第9章第2節の「記載事項」と矛盾が・・・。
つまり、Ⅱで「対象確定条件」を書くとありますので、ここで上記の3点を記載したら、じゃあⅢのとこには何を書くのか・・・・ということになってしまいます。同じ書籍の第9章の部分を読みましたが、普通に基準と同じことが書いてあって「?」です。

では最後に私が受講している某社の通信教育ではどのように教えているかというと・・

『対象確定条件は、(1)対象不動産の内容の確定、(2)物的事項の確定、(3)権利の態様に関する事項の確定の3つがある。
ただし、鑑定評価報告書の記載事項のⅡでいっている「対象確定条件」とはこのうち(1)だけのことを指している。なぜならば、(2)や(3)についてはⅢに記載することになっているからである。』

これってなんか「理由は無いけどそう書いてあるからそうなんだ。」みたいですっきりしないんですけど、実際、実務家の方の書いた本にもほぼ同じようなことが書いてあることから(某社の講師ももちろん実務家ですが)実際のところ実務の現場ではこのような解釈になっているのだろうということで、私も今はこの認識で解釈しているところです。

*この点に関しては個人的には基準の内容が適切ではないと思っていますので完全に納得というのは無理だと考えています。

●●●2006/04/14 追記しています●●●
http://d.hatena.ne.jp/h18_rea/20060414