敷金返還債務(3)

前2回↓
2007-10-03 - 不動産鑑定士への道(受験〜実務修習)
2007-10-05 - 不動産鑑定士への道(受験〜実務修習)


引き続き
「取引に際して買主が敷金返還債務を引き継ぐ場合は、決済額は本件鑑定評価額から敷金金額を控除したものとなる」
についてです。

さて、少し問題をシンプルにします。
上記文章には「引き継ぐ場合は」とありますが、では「引き継がない場合は決済額は本件鑑定評価額となる」とも読み取れるがそれでいいのか?

どうですかね?

引き継がないってどういうことなんでしょうね。敷金返還債務を引き継がない。賃借人退去時には旧所有者が敷金を返還する?それとも敷金はいったん清算して新所有者と新たに敷金契約をするってことでしょうかね?よくわからないのでいずれのケースについても考えると

a)賃借人退去時には旧所有者が敷金を返還する
ということは不動産から得られる収益のうち、敷金の運用益の部分は旧所有者にあり続けることになり、敷金の運用益を含む純収益から求めた収益価格を元に鑑定評価額が決まっているとしたら、買主が手にする経済価値を表示する適切な価格とはいえない。具体的には敷金の運用益部分を還元利回りで還元した額、すなわち敷金金額分だけ鑑定評価額が大きいのだから、決済額としては敷金額を控除しなければおかしい。

b)敷金はいったん清算して新所有者と新たに敷金契約をする
新所有者は新たに敷金を手にし、返還債務を負う。ただし、その金額が従前と同じとは限らない、もし同じなら結果として問題は無い。しかし異なる場合には従前の敷金額を前提に求めた収益価格を元に鑑定評価額が決まっているとしたら、買主が手にする経済価値を表示する適切な価格とはいえない。(でもこんなことあり得ないですね。なんで賃借人がそこまでしなきゃいけないのかと。所有者が変わっても引き継がれるだけって民法で勉強したしなぁ。)

やはり引き継がない場合はそのままでいいとは思えないのですが・・。(というかaもbもあり得ない・・)


売買の目的の場合、
「敷金返還債務は新所有者に引き継がれることを前提とのする」とか
「引き継がれない場合も現在の敷金額と同額の敷金が差し入れられる前提とする」とか
「敷金の処理については未定であるが、現在の敷金額を前提として鑑定評価する」とか
敷金額の扱いについては、キッチリ決めておくべき事項では無いでしょうかね?

まあほとんどの場合、引き継ぐわけで、決済時に相殺しているんでしょうから、いちいち上記の文章の意味を掘り下げる意味は無いのでしょうけど。

だったら、「取引に際しては買主が敷金返還債務を引き継ぐこととなるため、決済額は本件鑑定評価額から敷金金額を控除したものとなる」
とかの方がいいような気がしますが。

◎参考になったURL
http://www.sanyokantei.co.jp/problem/problem06.html
http://www4.ocn.ne.jp/~kajitosi/col98.htm
http://www4.ocn.ne.jp/~kajitosi/col99.htm
http://www4.ocn.ne.jp/~kajitosi/col100.htm