貸家の積算価格・・・

以下の文章は私が受験生のときにブログに書いたものです。

                                                                                                                                                                          • -


[貸家の積算は自建の積算とは同じものか違うものか]

誰か教えて。。

今、ここに全く同じ物件「建物及びその敷地」が2件あったとする。地理的にも全く同じ位置にあることを想定する。(現実にはありえませんが、理論を考えるための仮定としてご了承ください。)

片一方は賃貸されており、「貸家及びその敷地」となっている。

もう一方は普通に所有人が住んでいる「自用の建物及びその敷地」である。

両者の差はそれだけである。他の要因は全て同じと考える。

それでは、次の場合に求められる「積算価格」は2件とも同じかそれとも異なるか。

ただし、「実務」というものを一切考慮せず、鑑定評価基準のみを適用することを前提とする。(要は受験生の頭で考えてどうなるか)

1.貸家で徴収されている賃料は「不動産の経済価値に即応する適正な賃料」 である。

2.貸家で徴収されている賃料は「不動産の経済価値に即応する適正な賃料よりもかなり高額な賃料」 である。そしてこの貸家は未来永劫適正な賃料より高い賃料を取り続けることができるすばらしい物件である。

私の考えを述べます。

1の場合「同じ」になると思う。2の場合は貸家のほうが高くなる「気はする」が、しかし基準の定義どおり積算価格を考えるなら「同じ」になると思う。もし貸家のほうが高くなるとしたら、どういう理屈で高くなるのかがどうしてもわからない。

以下順を追って・・

■積算価格を求める際には、「再調達原価」を求め、そこから「減価」を行う。

* 再調達原価で差が出るのか。

建物及びその敷地の再調達原価は、土地の再調達原価を求め、そこに建物の再調達原価を加算する。地理的にも全く同じ位置にある仮定なので、基準を参照する限り、土地の再調達原価に差はでない。(ここで上に建っている建物が高い賃料を取っているとか反映されないと思ってますが、それが違うのでしょうか)。また建物の再調達原価に差が出ないことも明らかである。(基準を参照)

* 減価で差が出るのか。

まず、減価修正において、高い賃料を取っているという理由で「増価」するということがありなら、問題はここで解決する。しかし、基準には減価修正で増価を考慮するという記述はない。であるならば、普通に所有者が住んでいるだけの「自建」を「減価」しなければ両者の価格に差は発生しないことになる・・。しかし、「条件のいい貸家と比べたら減価」というのはおかしな話だ。いま、このような対比の下で差をつけるとしたら「減価」するしかないというだけのことであって、もし単独で鑑定評価をするとしたら、そんな減価ありえない。

* 積算価格を増価修正する?

積算価格が出た後で、賃貸借の条件がよいということで、貸家のほうを増価修正するということならば差をつけることができる。ただし基準にはそのような運用は記述されていない。

この話は別に貸家と自建の話でなくても、全く同じ物件で、賃料が適正水準である場合と、賃料が適正水準の2倍である場合でも同じことが言えます。もし「積算価格」に差が出るというのならば、どの段階で差が出るのかが知りたい。

「差が出るわけねえだろ」という意味ではなくて、どの仮定で差が出るのかが本当に疑問なのです。

基準を厳密に適用する限り差は出ない、したがって「積算価格」とはそういう性格のものというべきなのか(「だからこそ貸家の鑑定評価では積算価格は比較考量」というのも納得はできる)、はたまた、基準上で上記内容について合理的な説明をしたうえで両者の積算価格に差がでるという理論を成立させることができるのか。

『要説』では積算価格について、

「賃貸借契約の内容や管理運営の内容による価格への影響の考慮を厳密に行うのは困難である」

とあります。「やっぱそういうことか、積算価格で賃料云々を反映することは出来ないのかー」なんて思う一方、「困難である」と言う限り「できないことも無い」とも取れます。もし要説が「反映できる」という立場ならば、どのような手順を予定しているのでしょう。

賃料が極端に低い場合なら、経済的要因による減価等考えられる方法はあります。しかし、適正賃料以上の高い賃料だった場合にそれを積算価格に反映させる方法って・・。

やっぱりわからない。もし、積算価格自体を試算した上でその積算価格について、賃貸借契約等の内容に応じて増価、減価することが認められているということなら、そもそも

「価格への影響の考慮を厳密に行うのは困難である」という文章自体に意味が無く、いくらでも考慮できてしまいます。であれば、「貸家の鑑定評価においては積算価格が収益価格に比べて規範性が低いから、比較考量するんだ」というロジックすら崩壊してしまう気がしますし、収益価格の存在意義すら疑問符がつきます。一体要説の言うところとは何を意味しているのか・・。

今の私の結論:

積算価格で高い賃料がとれているとか、そういうのを反映するのは無理。だから積算価格は貸家だろうが自建だろうが、賃料が高かろうが安かろうが、土地と建物が同じものなら同じになる。それが「積算価格」というものである。(自分としても100%確信できない結論なのでどなたかご存知なら教えて頂きたい・・。)

                                                                                                                                                                          • -

今まさにこの問題(特に赤字部分)に直面しておりまして・・どなたかご意見ありませんか?

当時は積算価格には賃貸経営の良否なんか反映できん!どんな状況でも積算は一緒!と結論付けておりますが、それでいいんでしょうか。

私が気になっているのが、「試算価格の再吟味」における「各手法に共通する価格形成要因に係る判断の整合性」です。

たとえば、半分空室の貸家を評価するとき、収益還元法では純収益の想定や、還元利回りの査定においてこれを考慮することは間違いありません。つまり、満室の貸家と半分空室の貸家では収益価格は異なります。では、積算価格はどうでしょうか。もし、積算価格は満室だろうが半分空室だろうが一緒だとすると、賃貸経営の良否は一切見ていないことになり、手法間の判断の整合性が取れていないことになると思うのです。ですから積算価格といえども、半分空室であることを織り込まねばいけないと考えてます。

さらに、織り込むとしたらどこで織り込むのか、上にも書いてあるとおり再調達原価が変わることは無いですから、減価修正で減価するか、積算価格を出した後、何らかの修正を行うかになると思いますが、今のところ、「減価修正で一体としての経済的減価」が一番しっくりくるかなと思っています。

と、ここまで書いていても納得は出来ていません。逆に、賃貸経営の状態がよかったら増加修正しなければ論理的整合性が取れませんが、そんなことあるのかな・・とも考えてしまいます。

何かご意見いただければ幸いです。