継続賃料鑑定理論に対する現状のまとめ

先日、「継続賃料、こんなとき」「継続賃料、こんなとき(2)」をアップして以来、コメント欄を通じて議論してきた中で私なりに到達した結論をまとめておきます。
まず、先般の議論の中で私自身が複数の論点をごちゃ混ぜにしており、コメント頂いた方とすれ違いを起こした点があり、お詫びするともに今回は論点を明確に分けて書きたいと思います。

(1)差額配分法の優位性について
先に例を挙げたケースについて、「特別な約定が無かった場合」を想定します。つまり特に意識がなく、借り手の知識不足や浅慮によって2倍の賃料で店舗を借りてしまった場合です。また、経済変動、物価変動すべて横ばいを想定します。また、正常賃料が月額100万円、約定賃料が月額200万円とします。

10年後(何年後でもいいですが)、当事者において賃料改定の話がまとまり、「鑑定評価額で改定する」運びとなりました。
継続賃料の4手法のうち、賃貸事例比較法以外の3手法を適用したところ、

  • 差額配分法は、差額100万円を折半し、月額150万円の減額改定
  • 利回り法は、元本価格や公租公課に変動が無いため、月額200万円の現状維持
  • スライド法は経済動向を表す指数がすべて横ばいであったので、月額200万円の現状維持

と結果が出ました。

そこで、継続賃料としては月額200万円か150万円か、はたまた、その間か?ということですが、
鑑定評価の4手法に優劣が無いとするならば(基準等では特に優劣無く「関連付ける」という表現です)、現状維持か下げるとしても小幅に、という結論だと思います。(3手法のうち2手法が現状維持と出てますから)

しかし、経済変動が何も無く、特に意識して高く設定した賃料で無いなら、改定するたびに正常値へ近づいていくものではないか?という考え方もあると思います。

差額配分法の根拠は「新規賃料と継続賃料の間に差額が発生している場合には、当事者はこの差額を小さくするように努める傾向がある」また、特に現行賃料の方が高い場合には「賃借人としては他へ移転するという選択肢があり、現状維持は考えられない」(要は需要と供給の原則とか経済合理性といった話)といったことが論拠になっています。

(今回のケースでも、特に意識して決めたわけではないですから、賃貸人が「いや、高く借りてもらってありがたい、次の改定では少々下げざるを得ないだろうな・・」とか賃借人も「今の賃料は高過ぎる・・是非下げてもらおう」とまあ、こういう心境にあることは十分考えられるわけです。)

この論拠を、差額配分法という1手法にとどめるのではなく、『そもそも継続賃料そのものがそういう傾向を持っているはずだ』と考えるわけです。

わかりにくいと思いますが、手法間に優劣が無い場合、「正常賃料に近づいていくという側面がある」ことにしかならず、今回のケースでは「そういう考え方を取れば、確かに減額だね、でも他の手法の結果からは・・」ということになり、一概に減額と言えないわけですが、そもそも継続賃料そのものがそういう性質を持つと考えた場合、特に差額配分法の持つ意味が他の手法に比べて大きくなるわけです。

その前提に立てば、ここで150万円まで減額改定というのは、ごく考えうる結論です。しかし、その場合、継続賃料鑑定評価の手法におのずと優劣をつけていることは認識しなければいけないと思います。また、この考えが正しいとすれば、基準の構成も変える余地がある、ということが言えると思います。

私がどうか、と言えばこの点、後者の考えに近いです。

これをふまえた上で、次に同じケースで、当事者間に「あえて2倍で契約した」という意思が認められる場合が問題となりますが、長くなりましたので日を改めたいと思います。