実務修習の問題点や改善点について寄せられた意見

先月末に、不動産鑑定士登録のための書類を県庁にて提出しました。登録には3週間ほどかかるそうで、今は待ちの状態です。

さて、口頭試問が終わった頃から、実務修習生をはじめとするたくさんの人に、実務修習についての問題点や改善点に関するコメント等を頂きました。せっかくですから今回はそれらを抜粋、引用してまとめてみることにします(自分のコメントも含んでいます)。あくまで寄せられたコメントに基づく意見であり、そのコメント自体の真偽については知りようもありませんので、「コメントが事実であれば」という前提が付いていることをご理解ください。

■論文課題について

・確かにわかりにくい文章ですよね。というか今でも自分が正確に意図を読み取っているかどうか
・論文に関しては、模範答案(あるいは優秀答案)と合格答案の二つを開示してはどうでしょうか。

論文課題の文章がとても意味を取りにくく、また、キーとなる「高度利用賃貸」というワード自体の曖昧さ(大した定義が無い)から、出題者側の意図を読み取りにくかった。論文課題は意図するところを明確にして欲しい。また、これらの問題の解決案として終了後の模範答案の開示はどうか。

■面接の方法等

(面接には)公平性、公正性などが求められます。しかし、口頭試問では、4つの部屋に分けられて、4パターンの異なる面接官(試験官)による試問を受けます。面接をうける部屋が、AかBかCかDかで、結果が異なるようなことは、あってはならないことです。
高圧的な面接官もいるようですが、これも大きな問題です。人には、いろいろな性格があり立場的に有利な面接官から高圧的な態度を、取られると委縮してしまい、本来の実力を発揮できないこともあります。
口頭試問の主旨は、鑑定士としての実力を持っているか判定するものでしょうから、むしろ受験生に、しゃべらせるように面接官が、誘導することが大切だと思います。しゃべらせることによって、その人が鑑定士としての資質を備えているか判定できるのではないかと思います。

受験者の人数等を考えると、複数チームで面接せざるをえないと思いますが、面接官によってその方法(質問内容、態度)がバラバラというのは問題ではないか。また、高圧的にされる方もいるようですが、鑑定士の修了考査において圧迫面接のようなことが(あるとすればですが)必要でしょうか。

■当落判定の仕方

・結果は、面接のみでなく総合判断していただきたいです。
・口頭試問で聞くほど重要なことであるならば、実地演習の段階で指摘すればいいことだと思います
・知り合いには複数の質問に答えられなかったし、挙句の果てに勉強不足を指摘されつつも合格した人がいる反面、試験委員を論破して落とされた人がいるらしいです。
・昨年不合格だった理由は、口述試験の出来の悪さのみでした。不合格理由は通知してもらえるシステムになっていますが、口述試験当日指摘されたことが理由でした。
・一度、認定しておきながら、最終的に修了していないこともありうるという試験制度は、不自然な気がします。口頭試問で作成した内訳書が、他人のものを丸写ししたことが、発覚した場合は別として。

先日も書きましたが、修了考査の面接は、実地演習段階での不足事項についてその後のフォローが出来ているかについてのチェックのようです。したがってまず、実地演習について認定を出したときも減点事項・指摘事項があるのならば修習生にフィードバックされるようなシステムにして欲しい。
また、これらのコメントを見ますと、「面接だけで決まっている」というよりも、逆に「実地演習が終わった時点でだいたい決まっている」ような印象も受けます。もしそうなら、不備のある内訳書を中途半端に認定することなく、早めに非認定や再提出を求めることで、修習生に求める水準に達していないことがわかるような仕組みの方がいいと思います。

■その他

・指導鑑定士の力量、修習への熱心さが大きいと、私も感じます。
・いざ、制度を変えてみたが、やってみないとわからないという事が多過ぎ、検討する時間もなく見切り発車したとしか思えません。修習機関の力、指導鑑定士のレベルは千差万別で、修習生の力では全く如何ともし難いものがありますが、この現実を予想していなかったのでしょうか。皺寄せを全一的に修習生に帰しておいて、制度改正は有能な人材を広く集めるためとは白々しくて、不信感が募ります。修習生にできることは、協会本部に改善を求めることもありますが、修習に関する実際的な情報を共有して自分たちを守ることが重要。
・今後、試行錯誤の過程を経て実務修習の在り方が変わっていくことを期待します。しかし、現状いろいろな制度上不備なところが目立ちます。制度上の単なる不備であれば、即改良されるでしょう。私が心配しているのは、従来から業界全体が閉鎖的で既得権益を守ろうとする不動産鑑定士が非常に多いということです。このことは実務修習と無関係のようですが、実は非常に密接な関係があると思います。自分の既得権益を守りつつ、指導鑑定士になろうとする鑑定士がどれほどいるのでしょうか?いたとしても新しい不動産鑑定士を育成しようとする本当に考えて指導しているのでしょうか?このような業界全体の問題のほか、実務修習自体の問題も多いことは修習生の共通認識だと思います。この共通認識を協会が吸い上げて制度を変えてて行こうという姿勢がなければ、受験生が減少し、鑑定士自体の質も維持することは困難でしょう。
・しかし今回自分で受けてみて、今までがどうだったかは知らないですが、今回のシステムは指導鑑定士の負担が大きすぎやしないかと思います。個人事務所が主体の地方では、これを引き受けるだけでも相当な覚悟が必要になるでしょう。この辺をもう少し考えないと、個人(指導者)のやる気に依存するのでは立ち行かないでしょうね。

新制度の実務修習になり、指導鑑定士の負担は以前の制度よりも大きくなったのではないかと思います。(以前のシステムは知らないのであくまで想像の範囲ですが)また、業界自体の現状が厳しいこともあり、修習生の受け入れ先は少なく、また質も保証されたものではありません。特に、鑑定の実務は何も知らない状態で業界に入り(広く多様な人材を受け入れるのが新制度の目的の一つではなかったでしょうか)、いきなり課題の提出が始まる可能性がある現行制度では、最初の時期は特に指導鑑定士の力量や、きちんと指導してもらえるか否かが大きいと思います。仮にそうでなくても周りにたくさんの先輩鑑定士がいるような環境ならば何とかなるかもしれませんが、なかなか望めるものでもありません。

指導鑑定士の負担と責任が増す中で、今現在は指導者になろうとする鑑定士の数に比べて、修習生の数が多すぎるのが現状だと思います。しかし、ここ数年の合格者数は極端に減らしており、絶対数としては決して多くはありません。(年間百数十人程度)
これを受け入れることが出来ない現状というのは大変厳しいものだと言えます。また、仮に指導鑑定士の下で修習を受けられても15%〜20%程度は求める能力を身につけられず、不動産鑑定士になれないという結果になっています。

何故このような状況になっているのか?と考えれば上記のコメントで述べられていることをはじめ、色々な原因が考えられます。
もちろん修習生自身が向上心をもって努力しているかどうかが一番大事ですが、それ以外のことについては修習生ではいかんともしがたいのが現実です。

実務修習の問題点を考えていると、結局、もっと大きなレベルの話になってきます。どなたかがおっしゃいましたが、実務修習のシステムを修正するだけでは解決しない問題も多いと思われます。