受験生のたわごと

[貸家の積算は自建の積算とは同じものか違うものか]その②

そもそも、なんでこんなことを考えたのか。きっかけとなったことを思い出しました。
それはTACの択一式問題集の問題を解いていたときのことでした。

  • TAC問題集72(3)

・問い
貸家及びその敷地の積算価格の査定に当たっては、賃貸借契約の内容や管理運営の内容を価格に的確に反映すべきである

・解答
○本肢のとおり

これを見て、基準を読む限り「反映できない」と思っていた私はいろいろと調べました。そして要説の「困難である」という記述を見つけて「やっぱ困難じゃねーかー」と思いつつも、「反映すべきである」と「困難である」という記述は決して矛盾するものでもない(反映すべきだが困難である)ので、反映すべきなのかな〜と思いつつも、では、どうやって積算価格に反映するのかが全くわからなかった。

そしてさらにTACの択一式問題集を解いていると

  • TAC問題集76(5)

・問い
貸家及びその敷地の減価修正に当たっては、建物の老朽化や、建物と敷地との適応状況等を検討して物理的要因・機能的要因・経済的要因に基づく減価を求めるが、借家契約の内容を減価要因として把握することは困難である。

・解答
×「賃貸借契約の内容」は賃貸用不動産に係る重要な個別的要因である。したがって現行家賃が適正家賃と比較して著しく低い場合などには経済的要因として減価すべきである。

ううう。確かに三試算価格はそれぞれ三方式の考え方を取り入れており、単独で正常価格を指向するものである以上、家賃水準だって考慮しなきゃいけないってのはわかる気もするし、問題72との関連でも整合性はとれてる。でも、「的確に反映すべきである」だから「安いときは減価しなければいけない」といわれても「じゃあ適正水準より高いときどうすんのよ〜増価修正するのか。」と思っていた。

積算価格はコストベースの試算価格であって、収益性は反映されないのでは、と思う一方、正常価格を単独で指向するなら、それを反映させないことには無理だし、でも基準読む限り原価法において増価修正するなんて読めないし・・・と悩んでいました。

結局自分の中では、「反映すべきだが反映できない」という結論を持っておりました。TACの76の解答とは全く矛盾し、要説の「困難である」に比べるといい過ぎなわけですが、この結論が自分の中で全ての情報に折り合いをつける一番妥当な結論でした。(少なくとも実務を考えない基準、要説レベルの理論展開の中では)

ところが本日、TACの問題集の復習をしていたら、

  • TAC問題集75(1)

・問い
減価修正とは、減価の要因に基づき発生した減価額を対象不動産の再調達原価から控除することであり、再調達原価に対し増加が生ずる場合であっても、当該増加分は原価法では考慮外とすべきである

・解答
×建物が敷地の許容容積率を超過した既存不適格建築物である場合等は、当該建物の存続期間中は敷地の最有効使用を上回る利用が可能であるため、増加が生ずることがある。このような場合、原価法においてもいわゆる「建付増価」として試算価格に反映させる必要がある

という記述を発見しました。この「建付増価」がどのような状況においてなされるものなのか、既存不適格建築物の例しか載ってないのでわかりませんが、結局、「賃貸借契約の内容を的確に反映すべき」という記述は、原価法においても「増価修正」がありうるということを前提に書かれているのだろうと思います。家賃が低いときは減価すべきとありましたが、高ければ増価すべきなんでしょう。(そう書いて欲しかったところですが)基準や要説上の説明だけでは読み取れない、「実務上の運用」が混じっていたため、混乱したようです。(悪いといっているわけではありません)

これを考えると、賃料が高い貸家の積算価格と賃料が安い貸家の積算価格は異なるものとなるということでしょうか。実務上どの程度そういったものが考慮されているのか私にはわかりませんが・・また契約内容による増価を認めているなら、どうして要説は「反映することは困難」といっているのかもよくわかりませんが・・。

結局、実務を無視して、基準や要説ですべて折り合いをつけようとすること自体が無謀なことなのかもしれません。基準だって不動産に対する価値観の変遷や経済情勢によって改正されていくわけですし・・。