更地の鑑定評価には・・・①

先日の基本演習では商業地の更地の鑑定評価をしたのですが、資料として取引事例がいくつか与えられていました。
その中から採用事例を選択し、不採用の事例には理由をつけることになっていました。
(3次試験や新制度試験の演習問題ではおなじみの形式です。)

その事例は大半が、更地、建付地(自用の建物及びその敷地の敷地部分)だったのですが、一部「貸家建付地」なるものが含まれていました。

貸家建付地とは、「貸家及びその敷地の敷地部分」であり、基準にはこのような類型は記載されていませんが、実務上はこのような敷地を「貸家建付地」として取り扱うことがあります。確かに私が受験勉強した中でもこのように解説がしてあり、貸家建付地という類型の存在は知っていました。(受験生の方も聞いたことはあると思います。)

ここで質問です。更地の鑑定評価において、この「貸家建付地」の事例は採用できるのでしょうか?
どうでしょうか、もし鑑定士試験の演習問題であれば、私は間違いなく不採用事例に挙げます。
その理由は、「類型が異なる」です。

取引事例比較法においては同じ類型の事例で比較するのが原則です。しかし更地の鑑定評価ですと更地の事例が少ない場合、配分法を適用することも出来ます。つまり「自用の建物及びその敷地」の事例を配分法で建物と建付地に配分して事例資料とするものです。もちろん更地と建付地では類型が異なりますが、自用の建物及びその敷地が最有効使用であれば、それを配分して得た建付地の価格は更地としての価格に一致することになることから、最有効使用の自用の建物及びその敷地の事例であれば配分法を適用して採用することが出来るわけです。(受験上も主要な論点ですね。)

これが基準において

更地の鑑定評価額は、更地並びに自用の建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに・・・

とされている論拠だと思います。

この一文だけで、試験においては更地の鑑定評価において貸家建付地を不採用とする根拠になるでしょう。
そもそも基準では、貸家及びその敷地の敷地部分を指す類型(今で言うと貸家建付地)にあたるものが定義されていないのですから、当然といえば当然です。
以上より、更地の鑑定評価に採用できる事例は更地と自用の建物及びその敷地のものということになり、試験であれば私は採用しません。


試験上では上記のように考えることが必要と思います。しかし、今述べたロジックは正しいでしょうか?貸家及びその敷地の事例に配分法を適用して得た、「貸家建付地」の事例は本当に更地の鑑定評価に採用できないのでしょうか。採用したらおかしなことになるでしょうか。


私の今の考えとしては「採用出来る(というか採用しても論理的な矛盾は無い)」と思っています。時間が無いので続きは次回にしたいと思います。