借地権付建物の賃料を求める際の基礎価格

10月提出分の実地演習でいくつか賃料の課題が出ており、賃料の鑑定評価について再度勉強しているのですが、表題のとおり、家賃評価において積算法を適用する際に求める基礎価格について、その建物が借地であった場合何を求めるべきか、ということを考えていました。

借地権付建物の価格か、自建としての価格か、ということです。

つまり、Aさんの所有するA土地を借りて、BさんがB建物を建ててCさんに貸すときの家賃評価において、積算賃料の基礎となる基礎価格は、
あくまでCさんが借りるのは借地権付の建物だから、図のオレンジの部分とするか、それとも、白い部分も含めた自建としての価格とするか、ということです。

結構前に読んだ、こちらのページでは

http://www.tahara-kantei.com/column/column133.html

借地上の建物だからといって、賃料が安いなどという話は聞いたことが無く、借地権付建物の価格を採用するのは間違いであり、自建の価格を採用すべきであると説明されています。また、借地権付建物の価格を基礎価格とすべきとしていた「実務補習」(現在の実務修習ではなく、旧制度の鑑定士補さんが受けていた研修)のテキストについても、当時の鑑定協会会長から連絡があり、修正となった。と書いてあります。

では実際に、現在の実務修習のテキストではどうなっているのかというと、結果としては「両論併記」です。
借地権付建物の価格を基礎価格とすることを間違いとは言っておらず、

実務上、自用の建物及びその敷地としての価格を基礎価格とする考え方が存在する。

と、「その考え方も間違いでは無いよ」と紹介するのにとどまっている印象です。

最初、上記WEBサイトの記事を読んだときには、人が建物を借りるときに土地が借地かどうかで賃料に差が出るとは思えない、借地権付建物価格を基礎価格とするのは確かに間違いだ、と思っていたのですが、もう少しよーく考えてみると、あながち間違いとまでは言い切れないかなーという気がしています。

以下、自建の価格を基礎価格とする方法をA、借地権付建物を基礎価格とする方法をBとすると、積算賃料は

A:自建価格×期待利回り+必要諸経費(公租公課など)
B:借地権付建物価格×期待利回り+必要諸経費(地代など)

となります。
まず、純賃料に相当する部分を見ると、Bは敷地が借地権になっている分基礎価格が安くなり、純賃料も低くなります。
次に、必要諸経費を見るとAで土地の公租公課だった部分は、地代を計上することになります。
地代は土地の公租公課よりも高くなりますから、必要諸経費についてはBのほうが大きくなります。

ここでまず言える事は、B方法をとったら必ず積算賃料が安くなるわけではないということです。
借地権価格や地代との兼ね合いで、どちらにも転ぶ可能性はあります。
最初B方法をとったら直感的に賃料が安く試算されてしまうと思っていたのですが、理論的にはそうではないようです。

この辺については、下記サイトに詳しく説明されています。

加地都市鑑定所−コラム「BRIEFING」
http://www4.ocn.ne.jp/~kajitosi/col159.htm
http://www4.ocn.ne.jp/~kajitosi/col136.htm

↑こちらのコラムでは、

ところで、地代水準の高い借地権は(将来、下方改定の見込みが高いとはいえ)価格が低く査定され、その結果、基礎価格も低く査定されてしまう。すると基礎価格から求められる純賃料相当額も低くなってしまう。そこに加算する必要諸経費等(地代他)が高いため、求められる積算賃料は、自用地の場合と変わらない水準となるだろうし、そうなるように借地権価格が形成されるはずである。
 
とすれば、敷地が借地権か否かは、建物の積算賃料の評価に影響を与えないこと(BRIEFING.136参照)になり、建物所有者にとっても、どちらでもよいことになる。
 
それならば自用地として基礎価格を求めた方が簡潔であるし、判断による誤差の発生も減らせる。
 
したがって、敷地が借地権である建物の積算賃料を求める場合の基礎価格は、敷地については自用地として査定すべきである。

との結論を出されています。どっちでも良いけど自用地として査定したほうがよい。というものです。

求められる積算賃料は、自用地の場合と変わらない水準となるだろうし、そうなるように借地権価格が形成されるはずである。

この辺はいまいち理解が十分でないのですが、(私自身が論理的に整理できていないという意味です。)なんとなく正しいことを言っている気はします。

結局理論的には、B方法も「間違っている」ということでは無さそうだというのが私の今の結論です。
確かに賃借人の立場に立てば、「借地上の建物を借りているんだから完全所有権の建物より借りている部分が少ないはず、少なくとも純賃料相当分は自建より安いはずだ!」なんて発想はしていないと思います。

でもそれを言うと、区分所有建物及びその敷地の鑑定評価(例えばマンション)で行う原価法もどうなんだろうということになるのではないでしょうか。(中古マンションの売買において、建物全体の再調達原価を求め、減価修正をした後、配分率を査定してマンションの価格を考えている売主や購入者がいるのでしょうか)

あくまで、借りる対象物の価格を求め、それと期待利回りとの関係から賃料を考えるという意味では、借地権付建物の価格を基礎価格にすえる論理的根拠もあるのではないか、と思います。

  • ちょっと理解が不十分ですがネタ不足のためアップしてしまいました(笑)