修了考査で不合格になることについてのロジック

不動産鑑定士の実務修習は1〜3年かけて行われ、講義、基本演習、実地演習を経て、すべてにおいて認定を得た者が修了考査にすすみます。

修了考査は面接と小論文ですが、小論文は事前にテーマを与えられ、1週間程度の時間が与えられるためそれほど差がつくとも思えず、もっぱら面接が主眼になります。

ここで、講義(確認テスト)、基本演習(3回)、実地演習(23類型)、すべて協会から『認定』をもらった人が、最後に面接で落ちるとはどういうことなのか?という疑問が当然浮かびます。つまり与えられたカリキュラムですべて認定を受けた人がなぜ『面接』を受けて落ちるのか。

私が考えていたのは、実地演習における不正が判明した場合。

実地演習の提出物が認定を受けていても、当人がきちんと手順を踏んで作成したものでなければ課題を行った意味が無いわけで、面接で詳細をたずねることで「本当に自分で調査からやったのか?」を確認しているのではないか、それで不正行為が発覚した場合に落としているのではないかという点。

この場合、「認定」そのものに意味が無いのだから落ちてもしょうがない。

しかし、そうではなくきちんとすべて自分で作業し、認定をもらっても落ちる場合がある。矛盾するようにも思うが、これについては受験前にそのロジックが説明された。私の方で要約しますと

実地演習における「認定」は100点とは限らず、ある程度の基準で認定している。しかし、修了考査を受ける時点では求める水準に達している必要がある。従って、「認定」をもらったとしても不十分な点がある可能性があり、その場合は、引き続き研鑽して修了考査までには必要水準を有していなければならない。それが出来ていない場合が、修了考査で落ちる場合

つまり、実地演習を提出しているのは鑑定士になるための途中段階だから、ある程度の出来で『認定』を出している。しかしそれがイコール鑑定士としての実力を有している、鑑定士として十分な成果物であるという意味ではない。だから、全部認定=修了ではない、ということです。

なるほど、よく出来たロジックだと思う。

しかし、そうであるならば、実地演習について認定、非認定と結果を通知するだけでは不十分で、「一応認定だが、この点とこの点に疑義がある」など『出来ていない部分』の指摘を頂かなければ、修了考査までにそれを勉強しなおすことも、身に着けることもできない。
ただ『認定』と言われただけでは「自分の評価書はよくできていたんだな」と思ってしまっても仕方が無いのではなかろうか。

今回、修了考査の前に、実地演習において指摘事項、減点事項になったポイントが公開されました。(協会ホームページで見られます)これは、上記のような指摘を想定しての対応ではないかと思います。見直しておくべきポイントは公開しました、という。

しかし、やはり上記のようなロジックを貫くならば、個別に改善点の通知、指導をしたほうが、不動産鑑定士として必要な力を身につけるという修習の目的を果たせるのではないかとは思います。


*本当は考査の結果発表後にアップしようと思っていましたが、落ちていた場合に「負け犬の遠吠え」のようになるのを避けるため、先にアップすることにしました。